iQOSの副流煙
GOOD NIGHT BABY/あいみょん
好きだったベランダに出る気も失せた
湿度が絡まってベタつくあの感じが嫌だ
iQOSの匂いって、無い
すっかり鈍った嗅覚に不意を打ったのが、それもまた自分の副流煙だった
クーラーの風に乗って私の顔面を直撃したそれが、1月の記憶を蘇らせた
何でも良かったあの夜のこと
だって、心から楽しかった
長い苦痛の日々から救ってくれた
それが間違いでも、すぐに解ける魔法でも、あの日の景色がすごく綺麗でそれで良かった
幾度となく歩いたホームから見る、初めての夜明けの空
年が明ける前、19歳が終わる頃、年下の男の子に出会って、私の生活が侵された
これまでまともな恋愛関係に至ったことのなかった私は、それを機にまた、ズブズブと沼に落ちていくことになる
毎度のことながら何がいけないのか分からないし、こうも強くまともな恋愛を焦がれているのに、どうにも私には運がない
どころか、美貌もなくて、職もないので当たり前と言われればそれまでだけども
望まない夜を何回か経て、誰かを好きという気持ちに正しい形がない、あるいは私だけがどう足掻こうが正しい形にならない人種であることに気付いて、すべてに諦めがついた
もう放っておいてほしいんだ
ブロック解除したアカウントをまたフォローするとか、思い出したように連絡をしてくるとか、もう全部、みんな、やめてね
誰のことも覚えていたくないの
こうやって傷物として仕舞って鍵を掛けておいた記憶を、意識の外で開けたりしないで
いまさら、しあわせだったなんて思いたくないし、そんな惨めなことないでしょ
あんた達のおかげで、ときめきを失くしたんだ
期待すること、愛を持って接すること、お金と時間と体を使うこと、そして心を揺らすこと
全部不正解だったんでしょ
本当に時々、どうしようもなく美しい景色を見て、愛おしさに殺されそうになることがあって、そんな畏怖から一緒に逃げてくれる人が今までもこれからも居る訳がないことに気付く
こうやって生きていくしかなくなったよ
満足ですか?
杜生さん、まるさん、竜太、海成、祐介
私はあなたたちが大嫌いです