Scarlet Sky/伊集加代
死だ。一年ぶりにここに言葉を残そうと思って、書くべきことを思案してすぐ浮かんだ。
死だ。
二年もの間、私にとって十分に長すぎる時間を、まるで健常者の真似事をして過ごしてきた。
朝決まった時間に起き、決まった番組を見ながら化粧をし、決まった時間の電車に乗る。うちに帰って束の間の自分の国を愛し、また眠る。
糸がプツっと切れた。
東京を去って、首の皮一枚の状態で9ヶ月が経った。
誰も私を見ていない。
私の国は滅び、明日を望むこともない。
死んでしまいたい。
私は、精神弱者だけど、ODはしても自傷行為はしたことがなかった。
どんなに辛くても、愛する両親に「死にたい」などとこぼしたことはなかった。
最後の砦だと思っていたのだ。
何不自由なく、間違いなく、これ以上ない愛情を注がれて育てられた。
何度失敗しても、いつも私の味方で、幸せへの手引きをしてくれた。
さんざん世話をかけた。
だから、最低限の矜持として、生きる姿勢だけは貫いてきた。
ママに、死にたいと言って泣きついた。
生まれてこの方、そんなことを一度たりとも溢したことのなかった娘が、死にたい死にたい、もう本当に何もできないと泣き喚いたそれは、ママにとってきっと何よりもショックを受けたと思う。
パパから大量の生きるための食べ物と、生活するための物資が届いた。
暗に、生きろと言っているみたいだった。
それももう一ヶ月ほど前の話。
昨日、また、ひどく落ち込んでしまった。
誰も私に興味がない、誰も私を要らない。
私が求める人は皆、私を疎ましく思っている。
世界が文字通り絶望で溢れた時、人はどうしようもない現状を嘆くかもしくは死を選ぶほかない。
恋人から音沙汰がなかった。
まるで私の存在を意図的に無視しているようだった。
「おやすみ」と言ったそれが、届かなかった。
糸が切れた。
私はいない方が良いと、結論を出された気分だった。
ベッドから動けず、ODするための薬もないのであちこちのホットラインを探した。
泣きながら探した。
死にたいと言いながら、心の奥底では誰か助けてと思っていた。
深夜でも繋がるチャットホットラインで話を聞いてもらった。意味なかった。分かってた。何もない、話せることなどない、誰も私の気持ちを理解できない。
チャットの返事を待ちくたびれて、泣き疲れて、朝5時に眠った。
悪夢を見た、悪夢についてはまた後で書く、多分。
全てのSNSを消したことにようやっと気づいた恋人が16時に送ってきた「何してんの?」というメッセージで起きた。
依然として死にたい。