恋と退屈

 

恋と退屈/yonige

 

危機感を持った。決死の覚悟で銀杏を誘ったわたしを邪険にしたアイツのこと。このまま、恐らく、平行線で続いてしまうと思った。

もうすぐ20歳が終わる。怖かった。空の宝箱を守り、磨き続けることに20歳をまるまる費やしてきたと気付いた。

今、わたしの手で、この弛んだ糸を切らないと、後戻りできない。

居酒屋のトイレに隠れてキスをした時、大戸屋食ってセックスした日、シュークリームの解けない呪いをかけられた日、君とうまく話せなくなって三ヶ月が経った時、いくらでも切る余地はあったのにこんな所まで持ってきてしまった。

大切だった。好きとか嫌いとかきもいとかかっこいいとかもうそういうんじゃない、ただ唯一無二の大切なものだった。

でも。緩やかに募ったこの不穏な焦燥はもうどうにもできない。君が中途半端にも程がある言い回しで何度も何度も繋ぎ止めてきたそれ、もう切れちゃう。そっちにも言い分があるなら聞くつもりでこの数ヶ月ずっと待ってた。何も言わないくせに、何も触れないくせに、わたしだけを悪者にするのはお門違いだってこと、しっかり分かっといて。

言えなかった、好きだって。

紛れもなくわたしの世界に出てくる男で、パパの次に、一番好きだった。

大方意地で、ちょっとの期待を込めた、「ほんとうにだいすき!」だった。

不幸な恋の歌ばかりが解るようになりたいわけじゃなかったのに、だから、もうさようなら。

すごく悲しい。今日仕事に行けなかったことより、気付いたら朝だったことより、大事にしてたジャスミンとラジャーのコップ割ったことより、二宮が馬鹿な女と結婚したことより、ほんとうに、悲しい。

きっと後悔させてやるとか思いません。そんな日は来ない。でも、今までずっとそうしてきたように、わたしはわたしの中だけで、わたしの世界だけで完結させる。

わたしの世界にはこんな愛があることを知ってしまったから、何もほんとうだと思えなくなるかもしれないけど、この十字架を背負う時が来たんだと思います。

苦しいけど、悲しいけど、このまま死ぬのだけは嫌なの。

高円寺もてめえを想いながら過ごした記憶がすげえんだ、けど、わたしは変わらず高円寺に行くし、変わらない大事なひとと時を刻む。

さようならさようなら。どうか、幸せにならないで。どうか、わたしのことを忘れるな。