最愛の恋人たち

 

恋人と別れた。

正確には、別れたつもりで居る。

 

最愛の恋人たち/yonige

 

彼が何歳で、どの辺りに住んでいて、きのうまでは正確に覚えていたはずなのに忘れてしまった。

ていうか、きのうよりずっと前に忘れてしまっていたかもしれない。

 

「逃げても良いけど、それじゃあなたが変われない。」と言われたので、初めて別れ話というものを切り出した。

メッセージを打ってから送信ボタンを押すまでのあいだ、なにも食べていないのに胃のムカつきと吐き気に殺された。

世の中の女の子たちはいつもこんなことを繰り返しているのかと思うと、頭が下がる。

しばらく水道を流れる水を触っていないと生きた心地がしなかった。

 

好きじゃなかったけど〜好きだったような〜気なんてしなかった。

 

いつだって、愛してほしい男にはこの目を見てもらえない。

いつだって、愛してくれる男の目をわたしは見てあげられない。

愛されたかったわたしは、愛したふりをしたけど、それはいつも必ず間違いだと気付く。

 

きょうの夜、あの人は、初めて会ったときの店で、来ないわたしを待って、ひとりで、コロナを飲むと思う。

 

この吐き気が治りしだい、さようなら。